「警部補 矢部謙三」というドラマを覚えているでしょうか?
刑事ドラマにおいて、警部補の肩書きを持つ人物はたくさんいれど、彼ほどインパクトのある警部補はいないと思います。
ましてや、矢部謙三という警部補は、そもそもの始まりは主役ではなかったのです。矢部謙三という警部補が最初に登場したのは、「トリック」という作品が始まりでした。
マジシャンである山田奈緒子と、学者である上田次郎が、様々な難易度の高い事件を解決する中、矢部謙三は、必ず現場に現れるものの、なんの解決にもならないというのが、恒例のパターンです。
山田奈緒子とはケンカばかりとなり、大抵は髪の毛の事でネタにされてしまうという、このやり取りは、一見すると不要のシーンに思えますが、そんな事はないのです。矢部謙三がいなくては、ドラマはあれほどヒットはしなかったでしょう。そんな矢部謙三が主役のドラマです。
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やはり面白い
見る前から、期待は大きかったのですが、見ての感想は、やはり面白いの一言でした。矢部謙三というのは、実はとても身近に感じるキャラクターなのです。
態度は横柄だし、権力には弱く、部下には態度も大きい。一見すると、矢部謙三という男は、とんでもなくいい加減と思われますが、でも、その人間性は憎めないものがあるのです。
誰だって、権力の強い者には文句など言えるはずもありませんし、自分よりも立場が低い者を見ると横柄になってしまうでしょう。
矢部謙三という人物は、誰の心の中にもいるキャラクターなのかも知れないというのが、正直な感想です。
ブレないキャラクター
そして、このドラマは、「トリック」での矢部謙三とは、少し違う矢部謙三を出してくれました。なぜ、矢部謙三という男があれほど親しまれるのかというと、それはあのブレないキャラクターです。
普通、キャラクターは少しづつブレて来るのに、矢部謙三にブレはありません。そこもまた魅力なんだというのが、「警部補 矢部謙三」の感想です。
第一シリーズで登場する桂美晴や、桜木健一郎という、矢部謙三との絡みも面白くて、とにかく笑いっぱなしだったというのが感想です。
「警部補 矢部謙三」を見ての感想は、単なるスピンオフではもったいないというものでした。「トリック」は、もちろん面白いと思います。
でも、同じぐらい「警部補 矢部謙三」も面白いのです。そして、忘れられないのが、矢部謙三を敬愛する秋葉原人の存在です。なぜ、矢部謙三を敬愛するのか、その理由はわかりませんが、その異常な愛情は計りしれません。
ある時には、矢部謙三のカツラに盗聴機まで仕掛けるという徹底ぶりなのです。ですが、この秋葉原人の存在がなくては、矢部謙三の良さは伝わらないのだと思います。
一見すると、何も考えていない、もしかしたら、髪の毛の事だけを考えているのでは?と思わせる言動が多い中、秋葉原人とのやり取りを通じて、本当の矢部謙三の姿が見えるのだと思います。
らしくない台詞
秋葉原人が盗聴機を仕掛けた時の事件で、矢部謙三はらしくなく良い台詞を言ったのです。
「守るべきものがある人間は、自殺をしない」と言いました。
その瞬間。
あれ?
矢部謙三って、こんなにカッコ良かったっけ?と、思うようになりました。とにもかくにも、「警部補 矢部謙三」を見ての感想は、小ネタに笑い、矢部謙三と周囲の人間とのやり取りに笑い、そして、たまに、ごくたまに良い事を言ってくれる。
そんなドラマです。
派手なアクションシーンも、泣けてくる人情的なシーンもありません。でも、その代わりに、もっといろんな事を教えてくれた気がします。
人は、時には自分の事を優先的に考えても良いんだという事が、矢部謙三を見ていて思いました。出来れば、もっと長いシリーズで見たかったです。